ギターマガジン300号記念オリジナルギターを弊社が製作する事になりました。詳しくはギターマガジン2003年4月号から3ヶ月にわたって誌面でご覧になれますが、誌面ではお伝えできないもう少し細かい部分をここではお伝えしていきたいと思います。

第三回 塗装〜組み込み〜完成まで その1
(ギターマガジン誌 2003年6月号掲載)


さて、木工が終わった後はいよいよ塗装に入ります。一口に塗装と言ってもその工程はいくつかに分かれており、さらにそれぞれの工程ごとに手間が掛かる為、一本のギターを塗り終わるのにも大変時間が掛かってしまいます。また、今回のGM-300はオールラッカーと言うさらに時間の掛かる方法で塗られています。まさに根気のいる作業です。
一番最初に「シーラー」と呼ばれるヤニ止めを吹き付けます。これは木材から出るヤニを止める役割と、次に乗せる塗料との密着を良くする役割があります。 一日乾燥させた後、次に色を乗せる為の下地を作ります。「サンディング」と呼ばれる工程で、間隔を空けて何回も吹き付けられます。ラッカーの場合は一度に乗せられる塗膜が薄いので特に大変な作業になります。 ある程度の塗膜の厚さになったら一度サンドペーパーで研磨し、平らを出します。この時点で導管などが埋まり、綺麗な平面が出ていればサンディングは終わりです。しかし、まだ埋まっていない個所があれば、再度サンディング作業に戻ります。
いよいよ着色作業に入ります。今回はレモン・ドロップと言うカラーです。基本色はイエローですが、イエローのみですと明瞭さに欠けるので、エッジ部分を同系のやや濃いカラーで吹き、引き締めています。ボディバックは赤茶系で落ち着いた雰囲気に仕上げました。 最近良く見られる「ナチュラルバインディング」を。これでボディサイドにあたかもバインディングが巻いてあるかのように見えます。実際はその部分だけ着色せず、元の材色のままなのです。トップ部分はエッジから約1〜2ミリをスクレイパーで削り取ります。 最後にクリアーを吹き付けます。これは着色層の保護と言う役割があります。この作業もサンディング同様、何回も吹き付けていくのです。そして吹きつけ作業が終了した後は乾燥に移ります。
ヘッド部もボディと同色に塗られました。ブランドロゴも入れられてます。 ある程度の乾燥後に「水研」と言う作業に入ります。トップのクリアー層はスプレーガンで吹いたままだとデコボコしているので、これを無くし、平坦な塗装面を得る為に行います。ラッカーは非常に薄い塗膜ですので、剥がしやすく、細心の注意が必要です。 水研作業後、艶が無くなった塗装面に輝きを戻す為、「バフ」をかけます。高速回転する布に微粒子の研磨剤をつけて磨いていきます。これで鏡面のような素晴らしい光沢が生まれるのです。

最後にパーツを取り付けていきます。この作業で今まで眠っていたギターの本来持つポテンシャルを最大限にまで引き出す事が出来るのです。つまり、組み込みの良し悪しでそのギターが弾きやすく、素晴らしい音が出る物になるかが決定すると言っても過言ではないわけです。
フレットのすり合わせ。フレットはどんなに上手い人が打っても多少のデコボコが生じます。そのデコボコを取り、フレット高を均一にしてあげる作業がすり合わせです。この作業がきちんと出来ていないとフレットのビビリに繋がります。 フレットのエッジ部分を一本一本丁寧に丸めていきます。エッジ部分を丸める事により、握りこんだ時などにスムーズに手が動かせる。演奏性に非常に大きく関わる部分でもあります。 ナットの粗加工を行います。ナット自体の高さ、弦溝の間隔など実際に弦を張る前に行える作業はこの段階で終わらせてしまいます。
これはブリッジのアンカーを埋める為の下穴をボール盤で空けている所です。失敗は許されない作業ですので、正確に行っていきます。 ピックアップやポットなどを配線していきます。後々の事も考えて、分かりやすく、シンプル、尚且つ見た目も美しい配線を行います。 残るはピックアップを取り付けて、弦を張って、最終調整です。ここまで来ればあともう少しで完成です。